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家路

今では営業していない空虚となったファミレス。

そこで十年以上前(雪の降る夜)止め処なく古い日本映画の話をした知人も、今はいません。世界が雪で真っ白になった真夜中に別れて3ヶ月後、知人は失踪しましたから。

それ以来僕の中では誰とも共有できない、古い日本映画への愛が、寂しく積もっています。

誰とも分かち合えない古き良き日本映画への愛は、かえって僕を黙りがちにし、心の狭い人間にしていきました。

 だから、空虚となったファミレスを見上げる、その時の僕は切羽詰まっていました。

 仕事を投げ出して、逃げるように夜の街を彷徨う僕には、上司から電話がひっきりなしに入っていました。明日期限の仕事の最終プレゼンを、感情を爆発させ退席した僕には、もう何の未来の保証も見えなくなっていましたから。

『約束がなくなったんだ』

このまま知人のように失踪することが頭を何度もよぎりました。

「どこに行ったらいいのだろう?」

温泉にでも行こうと思って、ATMでお金をおろそうとすると、なぜか暗証番号が合うことはありませんでした。

『何も無い』

静に笑うしか在りませんでした。

なんの制約も、縛りもないと感じると、遠くまで飛んでいけそうな軽さが僕の中に漲りました。「何も無い」

夜の街を、とにかく北に向けて歩こうと思いました。

結局、腹が減って西の郊外にある家に帰った僕は仕事を失って現在に至った。

あの時、僕は「こころ」が最小になって気分だけの人間だったんだ。

そして約束を、ご破算にして、社会との繋がりを失った。

そうなって初めて、見えない約束で、まだ繋がっているものが見えてきたのです。

もう十年以上会わない知人との、一言も口にはしていない、約束も、その一つでした。

その約束によって、僕は今、彼やみんなと繋がりを取り戻そうとしています。

我々は言葉に出来ない約束によって、繋がっている。

ある時、気づくと約束に見出される私。

約束は贈り物だ。

約束は、我々より先にあって、常に我々の一人一人が、それを発見し合うことで、

自分の道を照らし、他人の道を照らす。

約束は、過去からやってきて、未知を照らす、希望のものですから。

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